45歳

夏子さんの子供は、45歳のとき乳がんになった。そういえば性別を聞いていなかった私は、子供が女の子であったかと、そのとき知った。

彼女は最初、胸を切ることを承諾せず、担当医は彼女が首を縦に振るまで、3時間がんばった。

「あれは親にはできない説得だったわ。」同席して、目の前で医師と娘のやりとりを、黙って見ていた夏子さんの、この話の『しめ』の文句である。

「なるほど。」私はいつも通り、うなった。