夏子さんと私は、短歌の会で知り合った。お互い60代が近くなっていた。
いつからそんな話をするほど懇意になったのか。夏子さんはよく、子供の話をした。念願の妊娠であったという。
最初は聞いてもひらめかなくて、何の話だったかと戸惑ったが、いつも冒頭が「なかなかできなかったのよ」なので、もう何が始まるのか覚えてしまった。
そのときどきで、子供が3つのときであったり、もう成人してからのことであったりした。独身で、子供もいない私は、経験がないから想像しては、「なるほど」と相槌を打った。
実際、興味深い話であった。